R100のパンフレット

会社の先輩に「君は是非観てくるべきだ。」と猛プッシュされたので、松本人志監督第4作、映画『R100』観て来ました。

http://www.r-100.com

なんというか、予告を観た時の足幡の感想は「お、ついに来たか!」でした。もともと『ドS・ドM』という用語を日本中に浸透させた張本人であり、みずからドMとして様々なネタやコントを長年に渡って提供し続けてきた彼ですから、相当独自なイメージがあるのだろうと。期待アゲというやつですね。

しかし、あまりにも彼と彼の映画を見る基本を感じ取れてない感想が多すぎたので、少し不安になってしまいました。
http://info.movies.yahoo.co.jp/userreview/tymv/id345946/

第一回監督作品『大日本人』もそうでしたが、私は松本人志の映画は普通におもしろいと思っているんです。なので、なぜ普通に面白いといえるのか解説してみたいと思います。(※足幡は映画評論家ではないのでこういう文章は書きたくなかったのですが、それでも現状があんまりなので…。)

大日本人 通常盤 [DVD]

まずこの映画は、『分かるやつだけ分かればいい、常人には俺の感性は理解できんやろ。』ではないんです。『Mが極まるとSになる!』と作中でもはっきり宣言されている通り、『MはMとしての快楽を得るためにSとして振る舞う』んです。これが基本です。つまり松本はMとしての快楽を得るためにわざと天才アーティスト映画監督っぽい発言をしてハードルを上げているんです。そこからもぅプレイは始まっている(続いている?)んです。この映画はこの基本ギャグの繰り返しです。「やめてくれ!私には病気の妻と子供が…。」からすでに主体的に主人公がプレイしているんです。

SかMか 体の闇がわかる本

MがMとしての快楽を感じた時の作中での表現『じゅわゎ〜ん』も、そこを見誤られないために明確に挿入されています。あれは本人にとって気持ちがいいのだ!と。これは実はTVメディアでは同じ表現方法があって、それは『めちゃイケ・マゾの三兄弟』にみられる恍惚時『ほわゎ〜ん♡』のSE表現です。視聴者にとってはそちらのほうがわかりやすく伝わりやすかったとおもいます。しかしそうではない表現だったのは、松本がパクリを嫌った…だけでなく、リアルなMがMとしての快楽を得ているわかりにくい恍惚時の表現を松本のイメージなりに表現しているから、と同時に作品が『ドMな視聴者が主人公に感情移入して快楽を得る映画』として撮っていないことを表しています。

殺し屋1 特別プレミアム版 [DVD]

読み違いが嫌なので、パンフレットを買って確認してみたのですが、この作品のコンセプトは、『100歳以上にならないとわからない映画』であり、SMは二次的なテーマなんですよ限りなく主題になってますけれど。つまり、もぅあえて入れなくてもいい『100歳の老人が撮った映画』というコンセプトを抜かずに、『100歳以上じゃないとわからない、俺(松本)も100歳じゃないからわからんけどな。』というボケ、のギャグ映画なんです。セルフボケです。マジで突っ込んだらアカンです。

とくに後半は、大規模な舞台崩しが畳み掛けますから、(「あれ?そういう設定だったけ?」という視聴者ツッコミのオンパレードです。)作品を作品として説明し切る最後の視点として残された部分だったんでしょうねぇ。
松本監督作品の全てに言えると思いますが、『観ている人が浜田になって画面にツッコミを入れて愉しむ映画』ですから、その分ハードルが高いとはいえますが、でも我々日本人は、通算視聴率15.8%の『ごっつええ感じ』を、『ガキの使いやあらへんで』を、年末には『笑ってはいけない』を10数年。更には、松本がはっきりと文筆で自らの笑いを語った自伝『「松本」の「遺書」』を読むことだってできるわけですから。初めて観た外国人ならいざしらず、我々は彼の笑いの基本ワザをきちんと体得して、観て、画面にツッコミを入れて楽しむことができるわけです。例えば、やたらキレて登場する「とりあえず何度もFackと言っているのはわかるが、なんであんなにキレてるのかまったくワケわからん」外国人芸などは、松本コントでは鉄板ですから、そういったものを映画ではないと言って理解できない、とするのもなんだかもったいない気がします。

「松本」の「遺書」 (朝日文庫)

最後に、「笑いと悲しみは表裏一体である。」という主張をしている松本人志は、いまだ社会に対して攻め続ける表現者です。幼いころ穴の開いた家に住んでいた彼は、それを面白い話として話しても憐れまれるのを酷く嫌がりました。「ちがう、俺はかわいそうなんじゃない、面白いんだ!…というか、それを面白いと表現するオレが面白いんや!」という松本の魂は、足幡の心の琴線に触れます。「俺は医者やないねんから、お前の奥さんの病気を治してやることはできへん。でも俺は芸人やからお前を笑わしてやることはできる!不謹慎かもしれへんけど!!でも笑って生きてたほうが絶対にええやんけ!!」という画面から読み取った妄想は、足幡のプレイの一部だったかもしれませんが…。

R100 [Blu-ray]

R100 [DVD]