ガルパン

※三部構成です。

■落語編

「いやぁ〜ところで熊さん。最近はどうも『ガルパン』なんてアニメが流行っているらしいが『ガルパン』っていってぇ何だぃ?」
「おやハッつぁん。知らねぇのかぃ?『ガルパン』ていやぁあのストライクウィッチーズで有名な島田フミカネのキャラデザさぁ。」
「お!つまり『ガルパン』てのは『ガールズはパンツじゃないから恥ずかしくないもん!』の略かぁ〜相変わらず粋だねぇ!」
「…と普通ならおもうだろ?ところがどっこい今回の『パン』はパンツァーの略よ!」
「ぱんつはぁ?『ガールズはパンツはいてないから恥ずかしくないもん!』だな☆!」
「おいおぃ…パンツ履いてなかったら駒都えーじになっちまぅじゃねぇかっ☆!」

駒都えーじ画集@マーブルマトリクス


■俺とガルパン

…という江戸っ子がそこいら中で妄想しているのは間違いないかと想われますが、『ガルパン』は当初全然ストパンと関係ないと思ってノーチェックだったんですよ。でも、オフ会でマイミクのきよみさんに「足幡さんが観てないのはおかしい!!」といわれて慌てて視聴したんです、バンダイチャンネルで。

で、EDでまさかの島田フミカネがテロップに出て「うわぁ〜!フミカネが眼デカく描いてる!日和ったなフミカネ!そんなにお金がほしいか!」と叫んだわけで…。

あとで調べたらフミカネ先生はキャラ原案で、アニメ一般ウケなリファインはあくまでもアニメーターの可愛い悪戯だったとおもうのです、いやマジで。というかフミカネは次回作は戦車ウィッチーズを創ると思っていたので(※脚がキャタピラになっているメカ少女。同人誌にはいくつかキャラクターも描かれている。)、次が戦車そのものだったのは意外だったのです。


そして『ガルパン』を観て、俺が猛烈に思い出したのは、「俺は戦車が大好きだ。」ということです。

どれぐらい好きかというと俺の生涯最初の作品が戦車の紙芝居(4,5才)だったくらい。というかソレを思い出したのです。うわぁああああああ!!あぁ…窓が曇ったらそこにかならず戦車の側面を描いていたなぁ、まだダグラムの影響を受ける前(※足幡は幼少の頃ガンダム派ではなくダグラム派だったのです)。4,5才で描いた『戦車の紙芝居』は大作でして、たしかスケッチブック5冊以上描いたような。ともかく俺の原風景の根本にあるんです。多分描いていたのはパンターか四号(爆)!!ティーガーは幼稚園当時そこまで好きではなかったかな…?

というわけで、メカ好きはみんないくつになってもいくつからでも、ともかく一番『戦車』が好き!なわけです。戦闘機が一番好きな河森は珍しい部類です (`・ω・´)キリッ。

島田フミカネ THE WORLD WITCHES (イラスト・画集)


■戦車アニメとはなにか?

で、なぜそれを忘れていたかというと、それくらい戦車は禁忌な題材なんです。なぜなら実在する戦車は戦争で大変活躍したからです。そう、カッコイイ軍服と拳銃に興味をそそられる子供でも、自国を蹂躙した同型戦車をみれば顔が引きつります。それはゆがんでいない教育を受けていれば当然のことです。

例えば、アメリカで実在の原子爆弾を使用したアメフトの作品が作られたとしましょう。リトルボーイズとかファットメンとか。とうぜんピカッ!!チュドーン!!とかなるけど試合に負けるだけ。「次は負けないぜ!」とかいいながら笑顔で握手して終わる。日本人ならハラハラしながらいうことでしょう。「おまえら、広島・長崎でいったい何人死んだと思ってるんだ…!」と。

そういうもののそのものです。実際、本物の戦車が描きたかった昭和のクリエイターは相当苦労したそうです。というか出来なかった。不可触。戦時中の人間がまだたくさん御存命で発言力も強かったから。たしか、反戦のテーマなくアニメに実在の戦車が登場したのは『うる星やつら』でどさくさに紛れて出てきたものが最初だったのではないでしょうか…?いや、それでも当時は相当な反発がありました。不謹慎だと。

だからロボットにしてみたり赤青黄色に塗ってみたりして、これはどう考えても兵器ではありませんおもちゃです。という装いを入念に施して擬似的に創作意欲が消化されていたんです。(※戦車アニメの企画を通す難しさは宮崎駿の『雑想ノート』にも詳しくあります。)

それがついに…戦車と女の子しか出てこないだけのアニメが創られるなんてっ!!往年のアニメーターは腑が煮えくり返っていることでしょう「そんな夢みたいなアニメつくれるわけがあるか!」と。

仏教には『それがやがて時間と共に意味を無くし、ただ形だけが残る。』という概念がありますが、戦車をみてもその記録が語られても、誰の心も痛まずに、ただ形の格好良さだけが消費される、そんな未来がいつかは来るかと思っていましたが、それが2012年の今年かっ!!という悟りに至らされたわけです。

当然、制作者サイドもそれには気付いています。監督が公式Webサイトで「女の子の成長の話がメインで、戦車は少し出てきます。」と書いているのは、万一のための布石のような声です。実際、ロシア編ではネット上でちょっと国際問題っぽく炎上しています。放送が中断しているのは制作に時間がかかっている以外に、クールダウンがあるのではないでしょうか?

あぁ、男の子はなぜ戦車が好きになるのでしょうね?大砲で虐殺したいわけでもキャタピラで殺戮したいわけでもなく、空すら飛べるわけでもないのに…。純粋にその機能と装甲に惹かれるのだと思います。ここに平和でこそ成立する職業、クリエイターの矛盾が生じるのです。

なんというか、島田フミカネが数段階の布石(たとえばストパンでは戦闘機を女の子の脚にはめて、さらにパンツをもっと目立つように演出して、巧にカモフラージュした航空機戦アニメで読者の目を欺き市場の拒否感を低減させるなど。)を経て、ついに投入された一切の虚飾のない(※ロボットに変形したり空を飛んだりしないという意味での)『実在の戦車アニメ』。萌えキャラを付けていれば何でも売れるなんて浅はかな戦術レベルでは誰も完成まで辿り着けなかった、高度に雌伏した戦略作品(※当然、眼が大きい作画も広範囲の市場に受け入れられやすくするための数多い布石の一つ)。それがついに開花した歴史上でも衝撃的なアニメ『ガルパン』に感慨深く想いが廻ったわけであります。

http://girls-und-panzer.jp

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「…で、『ガルパン』の意味はなんだか覚えてるかい?」

「え〜と、『ガルフォースはパティがいちばん可愛い♡』の略かぃ?」

「おあとがよろしいようで…。」

ガルフォース エターナル・ストーリー [DVD]